メーカー企業様*社員食堂改装に伴う造作家具・サイン工事
立秋(8月前半)を過ぎると暦の上では季節は秋となり、お盆を過ぎる頃には次第に暑さが和らぎ、名残の暑さを残暑と表現するのが昔ながらの日本の四季なのでございますがここ数年は残暑どころか、10月を過ぎてもまだまだ夏本番さながらの猛暑で今年も11月頃まで暑さが続くようです。
温暖化、恐るべしですね。。。
さて、そんな酷暑真っ盛りのお盆Weekに、
とある企業様の社員食堂改装の現場
へ赴かせていただきました。
従業員さんが夏季休暇でお休みされている期間を狙っての改装工事という事のようでございます。
弊社はその工事の中の造作家具とサインの製作施工をご用命いただきました。
多くの従業員さんが利用される大手企業様の食堂なのでスペースも広く席数も多い上に、植栽(グリーン)をふんだんに盛り込んだ明るく温かみのある空間というような全体イメージなのかな、と、お見受けします。
オフィスのご案件はここ数年、什器に植栽・緑を取り入れられたものが非常に多いですね。
今回弊社が製作させていただいた造作家具も植栽が装飾される円形のテーブル2台と、メニューを掲示する為のボードを兼ね備えたルーバータイプの間仕切りのような什器です。
まずは先に完成のお写真を3枚ご覧いただき、順にご説明いたします。
![]() |
![]() |
![]() |
@ 食堂スペースの中央に位置するテーブル
@は食堂スペースの中央に位置するテーブルとなりまして大きさは3200φございます。
広い現場に設置して植栽や椅子までセットされた状態で見ますと、不思議と大きくは見えないのですが結構大きくずっしりとした重厚感があるテーブルです。
植栽をセットした完成姿は、まさに大きな植木鉢という感じですね!
左のお写真は工場での仮組み時のお写真です。
写真だと伝わりづらいのが残念ですが、什器だけでみるほうが大きさが際立ちます。例えるなら6畳間いっぱいいっぱいぐらいの大きさというとイメージできますでしょうか。
完成形はこの大きさなのでございますが、これを現場へ運搬搬入する際にはこの大きさのままでは入らないので分割製作して運び、現場で再度組むという事になるのです。このままの状態で運べて現場ではそのまま置くだけならラクなのですがね♪
この什器は、外側も内側も縦分割、1/4円に分割して製作してあります。
例えるなら丸いホールケーキを4等分に切るイメージです。
完成形のお写真だと外側からの見た目(テーブル天板に腰)しか分かりませんが
仮組みをバラしますと、ケーキの断面のように内部の構造が見えてきます。
内部には植栽を受ける為の落とし天板と、その荷重を受ける為の補強台がセット
されている構造となっているのですが補強台においても搬入サイズの関係で
4分割製作の上、現場組み。
落とし天板のみは分割せずに、内部を組んだあとに組み付けるという構成です。
単純に4つに割りましょう、という思考ではなく搬入可能サイズ、用途に対する強度、意匠、組付けの施工性と再現性、現場でのアジャストや固定方法等与えられた条件や情報の中で、ベストな方法を模索の上、製作しているわけでございます。


6畳間が埋まるぐらいの大きなテーブルですが、出荷時の荷姿はここまでコンパクトになります。
(それでも1600角スペースはくうのでまぁまぁ大きいのですが・・・)
前述しました通り、ただ単純にコンパクトにすればよいという訳ではなく製作前の段階で現場施工を見据えて十分に練られた上で製作してあるのです。ここの考慮がなされているかいないかで完成品のクオリティに差が出るものだと思っています。
現場で完成して組みあがった物だけを目にして良し悪しを判断するのが常なのでこういった表に見えてこない製作サイドの知恵と技術を盛り込んだ綿密かつ繊細な段取りはほとんどの方にとりましてはご興味もなく、というかご理解に及ばない事なのかもしれませんが、モノづくりに携わるものとして大事な事として捉えています。
★話を戻しましょう★
このテーブル、縦割り4分割なので外側からの見た目としては、天板部分と腰部分に4か所のジョイントが入るわけですがジョイントのつなぎ目が目視では分からないレベルで仕上がっており、現場で違う作業者の手で組んでもほぼ同じ精度で組みあがりました。
製作段階での精度は、当然手がけた職人さんの技量が大きいところですが現場で違う作業者が組んでも同じ精度で組める要因こそ、再現性を考慮して製作してあるからに尽きないわけです。
もう1点、特筆すべき点としましては
3200φの円形(ドーナツ型)のテーブル天板の木目の流れ方です。
違和感なく流れるように木目を繋げているのですが化粧板というのは特寸でない限りはMAXでも4×8サイズ(長手が2400)までなので木目を綺麗に繋げる為にはどのように化粧板を繋げばよいかというのも考えられている点です。
例えば、1000×2000ぐらいの長方形の木目天板があるとします。
その大きさの天板でしたら1枚の化粧板で足りるので木目(柄)を繋ぐ、という事は考えなくてOKです。
化粧板は長方形なので本体が円形というだけで化粧板の取り寸というのは不経済になるのですが今回の
天板が4分割の形状で、さらに化粧板のジョイントも入ってくるようなサイズに
おいてシンメトリーに綺麗に木目を繋ぐとなると天板だけで6枚の化粧板を使用
する贅沢な取り方になります。
木目の流し方を変えるなどした経済的な取り方をしてよいのであれば、
その半分の枚数でもいけたかも知れませんが目流れを優先するとそうなる
わけでございます。
そのおかげが、本体ジョイントもそうですがメラミンの継ぎ目もほとんど
目立たず1枚モノのごとく木目が綺麗に一定に流れております。

当たり前のように綺麗に流れてるのでそんな事に気が付く人はどれぐらいおられるのだろう・・・
という昨今でございますが一応、特筆しておきたい点でございます。
ぶっちゃけますと、気が付かないような方に限って違和感があろうものならすかさずご指摘ポイントにあげがち、というのはあるあるです(笑)
きっとモノづくりにある程度ご見識があって、目が肥えた方しか気が付かない点かも知れませんが施工にあたる作業者にはそういった製作上の様々な意図を十分に理解をしてもらい施工に臨んでもらう事を大事にしています。
以上が写真@の説明でした。
A天板サイズは2100φの円型テーブル
この什器も一体のままでは現場に入らない為、分割製作となりました。
@のケーキカットのような縦分割とは異なり部位ごとの分割となります。
部位というのは大きく分けますと天板パーツ・胴体パーツ・そしてその天部と胴体を繋ぐ金物パーツです。


Aの写真は工場での仮組みの写真となりますがこの什器の意匠の特徴は何といってもバランスの悪さです。
天板の大きさに対しての胴体がタイトに感じませんか?
大きなコマのようで、胴体を軸にくるくる回り出しそうな見た目です(笑)
造り的には天板より上と下でセパレートされていて天板部分が胴体の内側に100oぐるっと乗っかる形で天板の重さを受けているので、円形という事を考えるとそれだけでも強度的にはほぼ問題はないのですがなにせバランスが悪くみえる意匠なので念には念をという事で、さらに天板下に補強金物を回しています。
Bの写真はテーブルの裏側ですが天板強度はこれでOKですがあとは胴体を床へしっかり固定するのがマストです。胴体の地板面から数か所アンカーを打ちたかったので内部の落とし蓋の天板は先に固定せずに胴体は石臼のような状態で現場納入。現場で位置を決めたら、胴体の地板に金物の円形プレートを重ねて仕込みその上(中)から床へアンカーを5ヵ所打ちました。最後に、植栽を受ける為の落し蓋としての天板を上から固定しています。胴体の内側から床へ固定する為に内部の天板はあえて現場で後付けとしてあるのです。
@同様、Aについても
組み上がった完成形の状態を見ただけではどう組まれているのかは
分からないかと思われ、もっと言えば、そのまま持ってきて置いただけ?
に見えるかも知れませんが様々な考慮と検討がされた上で製作施工され
ております。。。
余談ですがこの什器。
什器だけの状態だとバランスが悪くてあまり映えないデザインですね?
と個人的には内心思っていたのですが、植栽がセットされるとなるほど
という納得感★

植栽との什器の調和がピカイチでは?と思いました←あくまでも個人的な感想です(笑)
以上が写真Aの説明でした。
B ルーバータイプのコの字の間仕切り
そして最後はルーバータイプのコの字の間仕切りです。
長手で約6メーター、コの字の両側が約2メーター、高さが1.4メーターです。
こちらも大きい(長い)ので当然分割製作からの現場組みです(3分割)


この什器に関しては、ジョイント精度ももちろんですがレベル調整と床固定方法の検討がメイン。
方法は色々あるのですがどの方法が現場での施工性と再現性が高いかという事にフォーカスして製作サイドと検討した結果として木インローの方法をとりました。
今回弊社は現調していないので床のレベル状態の要領を得ないまま乗り込んだのですが什器の長手が約6メーターあるのでやはり設置位置の高低差は結構ございました。

手順は?
手順としては位置を出し本体の仮置きをして、お客様に位置がよいかどうかの確認。
固定位置のOKが出た上で初めて作業が進みます。。。
什器って内装現場においては最後の方の工程になるので前工程の仕上がり也で調整しなければならない事もままあるので、無駄手間にならない為にも固定前に必ずお客様にご確認を仰ぎます。
手順的にはまず木インローを並べてレベルを見ながら必要なところにパッキンを敷く。全体のレベルを合わせた上でインローを床固定し、本体をインローに被せるという方法です。
インロー材も、両側を同じ化粧板で仕上げしてあるので、パッキンを敷いて上がった部分も凹み巾木のように見えてくるという納まりです。
実際、上げた部分は床に頭を近づけて覗き込まないと見えないのですがこの手の什器の納め方としては丁寧かつベストな納め方だったと思います。
この什器、大きくスペースを食うだけあって設置後には結構な存在感を放っておりました。
以上が写真Bの説明でした。
仕上げはサイン工事
食堂のメニューのサインや、柱に取り付ける矢印サイン、袖サインなど数種類・複数ございました。
それらが下記のお写真となります。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
サインの面板にも、什器と同じ化粧板がそれぞれご指定されており食堂空間の中での統一感がございました。
![]() |
![]() |
サインの仕様としましては、木工で製作した面板にカッティングシート張りというものでございます。
サイズはまちまちでしたが大きいもので800φありました。
面板と言っても丸い方に関してはただの丸パネルというわけではなく裏にドッコ掛けの細工がしてあるのですが、壁に取り付けた時にその分の厚みが壁から浮かずに納まるように作ってあります。

形状が丸いっていうだけで作り的には細工するにもひと手間ふた手間かかるのですが結構手厚く作ってあります。
ですが実際には想定外の壁のあばれと若干のパネルの反りが相まって壁にジャストフィットとはいかない箇所もあったのですが出来る限り気を配った準備をした上での製作・施工でございました。

最後に
本件の現場ですが施工環境はとてもよく建屋は広々とした敷地内で駐車場も制限なし。
搬入経路やエレベーターのサイズ等は、製作物に対しては若干小さかったものの搬入の順待ちなどもなくスムーズに行わせていただき、効率よく作業させていただきとても有難かったです。
大手企業様のご案件という事で様々な関係者各社様がおられる中で、上流である施主様のご意向というのは商流に乗って下流にいる弊社のところまでスムーズに、そして正確に流れ着いて欲しいものなのですが、途中で岩に塞き止められてるかのように流れが悪く気を揉む一面やいわば伝言ゲームの難しさを感じる一面がございました事は否めなかったのですが、結果的には無事に納まりホッとしたというのが正直なところでございます。
どんなご依頼元・ご担当者様に対してもお相手の目線に寄り添った柔軟なご対応と、そして的確なご指示が引き出せるようなアプローチを心がけなければいけないと、このご案件で改めて再認識した次第であり、感謝申し上げたい所存です。
知恵と技術と手厚い配慮
製作に関しては、本件の什器は単純に意匠図の見た目通りに仕上げました〜という類ではなく完成形の見た目以上にプロダクト的な知恵と技術と手厚い配慮が盛り込まれています。
見れば分かる、という人は恐らく少数派だからこそあえてブログの中でぐらいは議事録として触れておきます(笑)信頼のおける工場で手掛けてもらいましたがやはり良い仕事をしてくれました☆
チームワークと小技
さらに本件で一番の苦戦を懸念していた搬入に関しても、事前情報をしっかり共有して、大きく重い什器のパーツをそれほど余裕がない間口に対して、いともスムーズに上手く交わしながら製品も、そして現場の設備もキズづける事なく運び込めたのは声を掛け合いながらのチームワークがなせる業なんですよね。
切り替えしたり、向きを変えたりなど小技を駆使しないとぶつけますので。。。
たかが搬入。
されど搬入なんです(笑)
製作班〜施工班へと、お互いをリスペクトする気持ちで
バトンを繋ぐように連携するとよい仕事が出来るなと改めて感じました。
そんなお盆休み中の現場でございました。
【特注什器 造作家具製作専門 株式会社STプラネット】
STプラネットへのお問い合わせは、お電話・FAXもしくはメールフォームからお願い致します。
お電話での問い合わせ:03-6903-7057
FAXでの問い合わせ:03-6903-7157
メールでのご連絡はこちら