化粧品ブランド 什器製作施工
今回は今年2月下旬にお納めしたご案件のご紹介記事となります。
桜の季節が過ぎましたが今年の春先はいつもより寒暖差が激しかったですね。
2月中旬頃に急に気温が上がって、この調子でどんどん暖かくなっていくのかな〜♪と思いきや寒の戻りで3月に雪が降ってみたり、今度こそ暖かくなってきたよねと軽装で調子に乗っていると急にまた真冬の寒さに戻されたりと、短い間に春と冬を何度も行ったり来たりした感覚でした。
気候が不安定な季節ってモチベーションが低下しやすいのだそうですが今回はそれとは関係なく、モチベ爆上げで臨んだご案件のご紹介記事となります。
ご案件内容はコスメブランドさんの空港免税店向け什器の製作施工。製作台数7台(製作図・施工含む)
コスメブランドさんの什器は過去にも度々ご対応させてもらっておりますが
おおまかですが下記のような特徴があると感じています。
*什器のデザインや仕上げはブランドさん独自でこだわられている
*異素材の取り合いや、照明、サイン・コルトンなどの電飾も多い
*店販什器としての機能や、仕上げのクオリティも重要視
*施主であるメーカーさんの見る目も厳しい事が多い
*什器に後付けされる装飾パーツ(ディスプレイパーツ等)が多い
そういった特徴がある事により製作的には手間のかかり具合がMAXに近いという意味で難易度が高めとなります。 すなわち、イヤでもモチベを上げての注力が必要となります。
本件の受注が確定したのは溯ること昨年の10月。
そしてお納めしたのは今年の2月下旬。
実に足掛け5ヶ月となる長丁場の道のりでございました。
受注確定から納期までそれほどの期間があっても製作期間(リードタイム)自体は長くタップリとっていただけるわけではなく
製作にかかるまでの準備期間の方が長い という事実(汗)
これは下でお請けする身としてはどうする事も出来ず仕方のない事なのですがクオリティを追求されるなら、まずはリードタイムの確保を優先 していただきたいなという本音はございます。
(小声)
準備期間のとっかかりは、まずはアイテムごとの施工図。
弊社も元請けさんのお手伝いをする形で施工図の対応もさせていただきました。
製作と連携しているので施工図をお任せいただく事はありがたいことでございます。
その施工図ですが、書き上げる実務日数よりも、施主様や設置施設サイドへ段階を踏んでご承認をいただくまでの日数の方が大幅にかかったように思います。
その間に、数種類ある塗装色の色見本の作成や、試し塗り、ご支給材の現物確認(試しカットや補修+塗装の確認)等出来る準備をして備えますが何しろなかなかGOがかからず気を揉む日々でございました。
GOというのは、わたくしどもの間では製作開始の号令みたいな意味でよく使われる言葉ですがお客様との間で図面や金額、納期等の契約条件が全てFIX(確定)となり製作段取りをスタートさせて下さいというご依頼元からの正式な指示という意味です。 お客様が仕様変更を度々行ったりなどで最終仕様がなかなか決まらずご検討期間が長いとこのGOがなかなかかかりません。 製作サイドは最終仕様が確定しないといつまでも手が付けられないという事になるのでリードタイムがどんどん削られていくわけです。
【今回のご案件】
製作数は7台と、そこまで多くはないものの
●素材が複雑に混合していて納まりがミリ以下の単位で細かい事。
●アッセンブリーや最終調整の工程に時間を要する事指定色塗装の種類が多い事。
●照明が多い事。
●ご支給材の扱いが何工程も必要な事。
などの様々な見立てからリードタイムは余裕をもってご設定いただきたかったのですが結局、前座期間の方に時間をとられた事により、リードタイムはぐっとタイトになってしまうのです。
形にするという作業が一番時間がかかるはずなのですがね(涙)
仕方のない事なのでモチベをあげなおしてギアアップです!
事例の方にお写真掲載させていただいておりますが、工程がすこぶる多い什器をタイトな
納期で無事にお納めする事が出来ました。
大前提として納期(とコスト)に余裕がありますならばこなせないご案件はそうは
多くないと自負しているのですが取り合い・工程が多い什器は時間が大事になってくるので
タイトなリードタイムで品質を保ちつつこなすというのは大分パワーを持って
いかれるのです(笑)

お話は変わりますが、本件は製作的に特筆したい点は色々とございましたがたくさんありすぎて全部は書けないのでに本件ならでは、という独特なエピソードに少し触れたいと思います。
今回、什器の仕上材のひとつとして、メーカーさんご指定柄のリブ材という物がございました。
このブランドさんの什器のシンボルのような材料でございます。
リブ材というのは下記の参考画像のように表面に凹凸を施した板材の事で主に内装壁面や什器の腰面への仕上材として使用されます。
(※画像はメーカーさんのHPより)


一般的に有名なのはサカイリブさんというメーカーさんの商材で柄の種類もたくさんあり、材質は主に石膏ですが突板を使用したタイプなどもあります。
フラットな面よりも凹凸な面は表情が出るので好んで使用されるお客様もおられますよね。
参考画像
弊社でも過去に何度かリブ材を使用したご案件もございましたので参考までに画像を載せておきます。


一般的にはメーカーさんのリブ材は定尺という長方形の規定サイズ(○○○○o×○○○o)があり使用する面積に応じて定尺からカットをしたり、何枚か貼り合わせて使用するものになります。
それは化粧板などと同じで定尺の板(四角形)からのカットや張り合わせなので加工性・施工性が高い事や、柄の繋ぎも比較的スムーズに行えます。
それに比して、今回使用させていただきましたリブ材の定尺の形状は下記のようなものでございました(石膏タイプ)

ん?これは何角形ですか?(笑)
ジクソーパズルのピースのようですよね(汗)
形状だけでも複雑ですがもちろん柄もあります。
何が言いたいかと申しますと例えば□と□を横に貼り合わせるなら接地面は1ヶ所です。

では、このパズルのピース2枚を横に張り合わせる場合はそれだけで接地面はいくつになるでしょう。

左の図の様に横連結の場合です。
何が言いたいかと申しますと例えば□と□を横に貼り合わせるなら接地面は1ヶ所です。
分かりやすいようにわざと離して配置しておりますが2枚合わせるだけで接地面は7ヶ所です。
しかも材の精度があまりよくないのでパズルのようにピッタリと綺麗にハマらず合わせると隙間があいてしまう(汗)

これを裏打ち合板の上に何枚も並べていったものが左側の画像
壁面什器1台分で十数枚並べていますがここから必要な箇所をNCで抜いたものが右側の画像になります。


切り落とす部分の方が多いんやないかい!ですよね。
この部分のみを切りとる為にほとんど必要なくなる部分まで並べるのは什器のサイズ感に合わせて柄を揃える為なのです。
しかもですよ、
切り取ってしまえばそんなものかと思われる方がほとんどかとお察ししますが、切り取った時に綺麗に柄を揃えるためには仮並べ→レベルを出しての貼り付け→そしてNCのカットライン指示を正確に出さない事にはこうはならないのですよ(強調)
何故なら先にも述べましたように定尺サイズがかなりの多角形な上に1枚1枚の精度が揃っていない為、
無造作に、ただパズルをはめるように並べただけでは柄のレベルは合いません。
NCのカットラインがいくら精度を出せてもカットする物自体の精度がないと、柄は
ずれてしまう事になります。
曲がって置かれた方眼紙に直角の線を引いてもマス目と線が合いませんよね。
そんなイメージです。


切り落として残った部分(使用する部分)は画像を見ていただくと分かりますようにこんなに細いのです。
この細くピンポイントに残す部分の柄を揃えるのってデータだけの図面指示ではうまくいかないです。
そしていくらレベルを出して貼り合わせても材の精度がない以上、100%の精度は出ないので貼り合わせた現物から、残す部分の柄の兼ね合いを鑑みて現物ありきで微調整をしたNCの指示図を作ります。
そしてNCのオペレートをする工場の方にその内容や懸念点を直接お伝えし、ご理解やご配慮をいただいた上で加工していただいた事でほぼ綺麗に柄が揃いました。
それって地味に大事な事でこの伝達が不十分だったり内容のご理解が乏しい方のオペレートだと違う結果を導いたりするものです。
機械加工なんだから正確でしょ、という短絡的な事ではないので個人的にはそこがわりと神経をつかった部分であり、ひとつの山場でございました。
さらなる手間は?
この仕上材はさらなる手間をもたらします。
それがつなぎ目の補修です。
つなぎ目のちょっとした補修があるという事は事前に想定済みではありましたが実際はちょっとした補修どころではございませんでした。
石膏タイプの材で、なおかつフラットな板材ではなく彫刻のように柄が繊細に彫り込まれている為彫が深い部分、すなわち厚みが薄い部分はカットの際に欠けやすいのです。
つなぎ目も想定以上の隙間があく事と、欠けた部分の補修は無いところに一旦石膏を
厚めに盛り足して、そこからピンホールが出来ないように滑らかに削って慣らして
いくという作業。
通常の什器製作の工程にはない作業ですしもはや補修の域ではないのです。
これは一体何屋の専門なのだろうというふとした疑問が・・・(笑)
きっと普通のリペア業者さんでは断られるような作業です。
造形屋?っていう業種があるならきっとその類です(汗)

作業にあたった職人さんは、もちろん専門外ですがかなりの精度で隙間や欠けをなかった事にように造形していました。
そういう作業って器用さも必要ですが、もともとのセンスも必要なので本件においてその職人さんの貢献度は非常に偉大でございました。
一般的には表面材ってカットして貼るだけでしょ、という認識が強いのですがここまで手こずらされたという事がまさにこのご案件ならではと言えるでしょう。
自社の責任で仕入れる材なら余剰も当然見ますのでまだよいのですが、ご支給材って限られた枚数で余分もほぼない状態での無理ゲーの攻略感でございました。
その他、強いてもうひとつ印象に残ったエピソードとしましては施主様の検品でなんと5時間滞在されたという事です。
(過去最長)
施主様(メーカーさん)がみずから工場まで足を運ばれる事はなくはないのですがだいたいは見た目の仕上りだけ見に来られる感じが多いので相場長くても1時間程度といったところなのですが休憩もとられずに5時間も熱心に什器に張り付いて見ておられた事がとても印象的な出来事でございました。
そんなところで、本記事に記述したのはアナザーストーリー的な部分でございましたが数ある
苦労した点のほんのひとコマですが、製作サイドからの目線でお伝えできていれば幸いです。
最後まで気の抜けないご案件ではございましたが
無事に完了した際の解放感と充実度はとても大きかったです☆

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