【異素材を勘合する什器】
今年もすでに折り返し地点を経過しました。
オリンピックイヤーの今年。
コロナが落ち着いてきた事や円安の影響も相まって
外国人の観光客を目にする頻度がとても増えました。
それに伴ってインバウンド消費が高まり、
インバウンド消費が高まる事により、様々な方面で経済効果が見込まれます。
そんなインバウンドは今大阪がアツいのだそうです。
今回の記事はそのホットな大阪が現場となるご案件でございます。
昨年も大阪の現場の頻度が例年より高めだったので
インバウンド需要が間接的に関係しているのかも知れませんね。
ご案件自体は化粧品メーカー様のDSコーナー什器となりまして、
過去にも何店舗か納めさせていただいているリピートのご案件なので真新しさこそないのですが
リピート案件とはいえ固定スペックの同じモノを毎回製作するわけではなく
その都度スペックが異なっておりますので
毎回1からいや、ゼロ(現調・作図)からの異なる労力が実は毎回かかっているご案件です。
特注のモノづくりというのは、
馴染みがない方からすると工場で作る(手を動かす)事が全て、
というご認識の方が多いかと思われますが、
具体的に手を動かす(製作着手の)段階というのは後半の作業になってきます。
わたくしどもの感覚からすると製作着手の段階まできたら工程を半分終えたとういう認識です。
その段階にいくまでには、現調や作図、段取り等の諸々の工程、
言ってみれば製作着手を進める為のお膳立てが必要、且つ重要となってくるのですが、
例えば、毎回決まった同じスペックのモノを製作するという場合ですと、
一度製作した事があるモノであれば、次に製作する際は前半のお膳立ての工程は省けて製作に取りかかれるので
効率の良い流れるお仕事となります。
反して同じご案件でも毎回スペックが異なる場合ですと、
リピートではあっても毎回新規案件と同様の労力を要するというわけでございます。
過去にも同メーカー様の他店舗の事例や記事はいくつか載せさせていただいているので
過程のご説明は割愛させていただいて施工完了状態からの逆回しで掲載させていただきます。
施工完了後
施工中
出荷前*仮組み
木部は化粧板でなくご指定色のウレタン塗装の全ツヤ磨き仕上げです。
DS、つまりドラッグストア内の什器なのですが、わりと贅沢なスペックです。
メーカーさんによって異なるとは思いますが、デパコス(百貨店)向けの什器はある程度コストをかけられても
DS向けの什器はコストを抑えたスペックにされるケースが多いようにお見受けするのですが
こちらのメーカーさんはそこに差をあまりつけておられないんですよね。
販売する商材が一貫されているからかなぁと思います。
例えば、某メーカーさんならメーカーさんの中でいくつかのシリーズ(ブランド)があり、
百貨店や専門店にしか置かないブランドとDSやスーパー系にしか置かないブランド等、
商材の価格帯で差別化されておりますが
こちらのメーカーさんは差別化されておられない分、どこに置かれていても商品単価は変わらないので
什器のスペックもある程度一貫されておられるのかなと勝手に思ったりしております(余談)
なんせ普段普通にDSでお見受けする什器って職業病的な目線でみますと
わりと簡素に廉価でつくられているなぁと感じる什器が多いのが事実だからです。
お話を戻しますと、 今回の現場は設置建屋の消防法の決まりとして それだけでも普通に製作するよりも材も工程も増えコストもアップ致します。 |
コルトンについて
そして、化粧品什器にはつきもののコルトンですが
通常、コルトンの正面板は透明のアクリルを使用するのですが
不燃という縛りがある為、今回はガラスを使用しています(アクリルは可燃の為)
ちなみに、コルトンというのは
乳白色で光を通すグラフィックフィルム(コルトンフィルム)を使用した内照式の看板の事を指します。
そして内照のロゴサイン
画像のサイン部分はコンプライアンスの都合上ボカシを入れているので文章のみでのご説明とはなりますが
什器によく組み込まれるサインの種類は、平面的なものから立体的なモノまで様々な仕様がございます。
▶ シンプルに文字をカットアウトしたシートを貼るモノ、
▶ シートに出力して貼るモノ、
▶ 木工やアクリルなどで作る立体の切り文字
▶ ステンレスなど金属でかたどるチャンネル文字(箱文字)、
そこにLEDを組み込むと内照する事も出来ます。
そして本件では象嵌(ぞうがん)と言って、
ロゴが立体的に面板から飛び出して、尚且つ内側からの照明で光っているサインです。
単に「立体」という見せ方だけではなく裏から発光して飛び出しているような奥行感を表現出来るモノになります。
その為には正面板をロゴ抜きして(ロゴの形より少しだけ大きくレーザーで切り抜く)
乳半アクリルの立体文字をその切り抜かれたところに裏からはめ込んで飛び出させる、
というのが通常のざっくりとした工程となりますが
今回は不燃指定でその肝心なアクリルの立体ロゴが使用できないのですが
じゃあその代わりとしてガラスで立体ロゴを製作出来るか?というと残念ながらガラスでのロゴ文字は
素材の特性上不可となりますので、
どうしたのかというと、 ロゴを繰り抜いた面板の裏から乳半ガラスをあててその奥から内照しています。 ロゴ抜きした面板の裏からガラス板をあてただけでは当然前に飛びださないのですが |
象嵌の場合は正面板からロゴが立体的に飛び出ているのに対して(凸)
今回は逆に面板の厚み分凹んでいるところから発光しているという見え方になります。
元からそういう見え方がご指定のケースもございますので
サインがどういう見え方をしたいかによって仕様のパターンは様々です。
ちなみに言うと、フラット象嵌と言って、
面板を繰り抜いて裏から立体ロゴを嵌める事は嵌めるのだけど
面板から飛び出させずにフラットにしたところから発光しているように見せたい、というケースなどもございます。
光ってしまえば別にそこまで大差なく見える、と思う方の方が多いと思われますので
文章を読んでも何がどう違うのかさっぱり分からないかも知れないのですが、
そういうミリ単位の見え方の違いにこだわるというお客様もやはりおられるのでございます。
サインやコルトンというのは、事例泣かせで |
さて、
表題でも示しましたように、
異素材が複合する什器、弊社も様々対応させていただいてきまして
やはり思う事は、まとめるポジジョンが本当に要になると思うのでございます。
複合什器と言ってもその複合具合が
ほぼほぼ9割ぐらいは木工で少し金物枠がつくとか、
金物什器に天板だけガラスが乗るとか、
その程度でしたら本体に+αなので単一素材とそこまで変わらないのですが
本体は木工だけど、金物、アクリル、ガラス、人大、照明、電気等が
わりとコテコテめに複合してくるとなりますと、そこに取り合いが生じるのですが
素材ごとに違う工場で製作したものを合わせる事になりますので
スムーズにアッセンブリーをする為には、それぞれの工場への発注時の指示が大事になってまいります。
いわゆる分離発注というものですが、
図面を分解して素材ごとに的確に製作指示を出す、というスキルでございます。
お客様からいただく図面って作るための図面というよりは完成形のイメージ図(意匠図・姿図)がほとんどなので
完成図からバラして製作用に噛み砕くという事がほとんどの場合で必要です。
図面(姿図)はかくけれどそれを製作する為の製作的なご指示を
お客様から的確にいただけるというケースは残念ながら近年ではほぼないに等しいというのが現状です。
それだけご担当者様も世代交代とでも言いますか、モノづくりに精通されている方は少なくなっておられ、
ご指示をいただくというよりは、足りない情報からご意向やご指示を引き出すべく立ち回りもマストになってきています。
例えばお料理のレシピ本なのに完成写真だけしか載っていなかったらどうでしょう?
レシピなら、例えば4人分作る場合の材料の記載があって
人参は乱切り、玉ねぎはみじん切りとか、
先にお肉を炒めて野菜を入れてお水を何?いれて何分煮込んで調味料を小さじ何杯入れる等
工程も含めた作り方が示してあって、その上で盛り付け例などの完成画像などがついていたりします。
材料も工程もなく完成写真だけの掲載であとはご想像にお任せです、っていうレシピ本だったら
かなり斬新ですね(笑)
ご想像に任せていただいて好きに作って良い場合ならともかく
オーダー什器はお客様のご意向のモノを作らせていただくという事が前提でございますので
曖昧なご意向やご指示の中からこちらが汲み取ったり引き出したりして明確化する以前に
バシンと明確に示していただけると非常にスムーズではあるのですがね。
重ねてになりますが、ご指示に沿ったモノを製作し納めさせていただくのがオーダー(特注)什器の前提だからです。
ですがそこまで寄り添ってご対応させていただくからこそ |
この業界にある程度の年月身を置いておりますと、
ご依頼下さるお客様のご担当者さんも世代やスタンスが変わってきておられるので
大げさに申しますと昔の非常識が今の常識的に仕事の進め方や関わり方というのが
変わってきているなと感じる事がございます。
それを近頃のご担当さんはこんな事も知らない、とかこんな指示も出せないなど否定的に捉えるのではなく
一旦は受け止めさせていただいて認識をすり合わせながら仕事を進めさせていただく努力は大事だなと思うのです。
それと相反して、製造サイドというのは世代交代の新陳代謝は比較的鈍く、
昔ながら的な思考の方が多いのでそこにジェネギャ的な認識の相違が起こらないよう、
そういった面でもフォローを加えながら
お客様がご所望されているオーダー通りのモノをまず自分がきちんと把握した上で
さらにはその理解したモノを正確に作り手に伝えるという事が本当に大事になってくるのです。
みる人によって捉え方や解釈が変わってしまう、というファジーな図面をよく目にするからこそ
異素材什器では特に、そこに補足を加えそれぞれが同じ認識のもと製作しまとめるという事に
非常に神経を使うからこそ、完成度や出来栄えを左右するのはそこの采配につきると思っております。
主題から論点がいくつも散らかってしまったのですが、
結局は自己満やないかい(笑)って文章に捉えられていなければよいなぁ。。。。
ご依頼主様へのご対応とモノづくりに真摯に取り組んだその先に
お客様のご満足を得てひとつひとつ信頼を積み重ねていくというスタンスを
今後も地に足をつけてしっかり実践していきたいなと改めて思うのでございます。
もしここまでお読みいただいた方へ誤解のないように追記しますと
弊社でしかまとめられないなんて什器はないので、そのような意図で執筆した記事ではなく
ある程度の設計や製作上のスキルと組織力があれば、
まとめられるという業者さんは少なくはないとは思います。
その中で、組織力ゆえのコストや納期に対する融通の利かなさ、風通しの悪さ等のデメリットというのは
無きにしもあらずかと思うのです。
小回りの利くご対応で同等以上の品質でお納め出来るなら
それはお客様にとりましてはかなりのメリットになうる事であり
そこが弊社の一番の推しポイントであるがゆえに特筆させていただいた次第です。
【特注什器 造作家具製作専門 株式会社STプラネット】
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